Story6:
レストラン”La Cuisine”はメリーゴーランド

Story6:「 レストラン”La Cuisine”はメリーゴーランド

瑞々しい木々の若葉が初夏の訪れを告げている
閑静な住宅街に瀟洒な洋館風の一軒家がたたずむ
木漏れ陽が白い壁をうろこ模様に飾っている

ここは若き天才シェフ 佐倉涼がオーナーを務める
レストラン ”La Cuisine”(ラ・キュイジーヌ)
フランス各地での修業を終えて帰国後にオープン
開店して間もないが、すでに二つ星を獲得
近い将来の三つ星レストラン入りが確実視されている

まばゆい陽光が差し込むテラス席には
仲睦まじい若いカップルや上品なマダムたち
落ち着いたゴージャスな室内では
ダンディーなスーツ姿の男性たちや老夫婦と
客層はバリエーションに富んでいる

さすがに数ヶ月先まで予約が取れないと
噂されるだけあって店内はほぼ満席
そしてここにいる全員が
涼の料理の才能と腕前に魅了されている

その芸術品とも言える料理の前では
彼の日本人離れした端正な顔立ちも
パリ仕込みの優雅な立ち居振る舞いも
ほんのアクセントにしか過ぎない
それでも誰もがうらやむような
ハンサムであることには間違いない

カラ~ン♪

いらっしゃいませ、何名様でしょうか

たまたまテーブルに挨拶に出ていた涼が迎える

涼さん、こんにちは
今日は彼と彼の両親を連れて来ました


ときおり友人と顔をだす女性が来店した
どうやら今日は彼の両親との顔合わせのようだ
すこし緊張気味の彼女に向かって

ようこそいらっしゃいました
お待ちしておりました
こちらの席にご案内します

いつもならそれほど愛想のよくない涼ではあるが
雰囲気を察してか、柔らかい笑顔を見せる
その気さくな雰囲気に彼女も、そして彼氏も
緊張がいくぶん和らぎ、ホッとした様子
4人をテーブルに案内して

本日は”La Cuisine”をお選びいただき
ありがとうございます
みなさんがこうしてご一緒に
お越しいただけて
とてもうれしく思います

スタッフ全員で
心のこもったおもてなしが
できるように頑張りますので
どうかくつろいで
お料理を楽しんでください


店の雰囲気に圧倒され気味だったご両親も
控えめながらも丁寧な涼の挨拶に笑顔を見せる

ご両親から彼女には

こんなステキなお店に
連れて来てくれてありがとう

という言葉が漏れる

場が和らいだところで

それでは私はキッチンに戻ります
どうぞごゆっくり

涼はいつものクールな雰囲気を
身にまといつつキッチンに向かう

料理の進み具合をさりげなく確認しながら
客席をゆっくりと歩く彼の姿を
ほぼ全員の視線が追う

”La Cuisine”での佐倉涼は
オーケストラの指揮者のように
その一挙一投足に注目が集まる
まさしく料理界のスターである

シェフ!
ホールでの接客ヘルプありがとうございました
お客さまのお出迎えが遅れてしまいました


気にするな
今日も忙しいからな
それよりも3番テーブルのお客さま
白ワインが空のようだけど
赤をおすすめするタイミングじゃないか?


はいっ
気がつかずにすいません

いつか超一流のソムリエになって
天才佐倉涼の相棒になりたいと願う彼は
店全体に細やかに気を配る
涼のすごさに舌を巻く

さぁ、忙しくなるから
ホールは君に任せた

彼の背中をポンと叩く

はい!

冷静でいながらも
相手を心から気遣っていることがわかる
涼の声かけはスタッフ全員を勇気づけ
店は活気に溢れる

キッチンに戻った涼は
メインディッシュの味見をしながら呟く

よしっ完璧
俺はこの味に恋をしてるな
そういえば
あのカップルとご両親
いつまでも仲良く
うまくいってくれるといいな

今日もいろいろなお客さまが店を訪れる
店は喜怒哀楽
いろいろな感情が交差する場所でもある
ここには出会いもあれば別れもある
ある人にとっては忘れられない
楽しい思い出の場所
ある人にとっては忘れたい
哀しい思い出の場所
それはまるで人生の縮図のよう

”La Cuisine”は訪れる人の
様々な感情を載せて廻り続ける
メリーゴーランド

楽しいときには笑顔を増やすような料理を
哀しいときには癒やしとなるような料理を
いつも料理で誰かの心に暖かい火を灯したい
そう願いながら
今日も彼はキッチンに立つ


(本ストーリーはアナザーワールドでのカレシたちの紹介のために制作されており、イケカレの本編チャットワールドのカレシとは直接の関係はございません)