Story7:「 キャンパスからたどる夢のみち 」
日本中の英才が集まる有名大学
キャンパスの中に点在する建築物の中でも
ひときわ由緒あるレンガ作りの大講堂
戦後、安保闘争の時代に
学生たちが革命を夢見て
立てこもった場所として有名な場所でもある
ここで開かれる憲法学の人気講義で
一生懸命にノートを取る一人の青年
名物教授による講義は超満員だが
その容姿は周囲の男性学生と比べると
ひときわ輝きを放つ
どこかあどけなさの残る甘いマスク
その表情には甘さと共に
そこはかとない陰影が刻み込まれている
そのアンバランスさが
人を惹きつけると共に
秘めた知性を十分に感じさせる
すらりとした長身で着痩せして見えるが
よく観察すると服の下には鍛え上げられた
しなやかな筋肉を秘めていることがわかる
彼の名前は桐生双葉
超難関の司法試験に在学中に合格することを
目指して猛勉強中である
教授が壇上から学生に念を押す
ここはちゃんと覚えておくように
司法試験では必ず出題されるぞ
では今日の講義はここまで
みんな課題の提出を忘れるなよ
チャイムが鳴り、教室がざわめき始めても
一人熱心にノートをまとめ続ける双葉
友人の一人が双葉に声をかける
双葉、さっき先生が説明していた学説だけど
後でいいからもう一度教えてくれないか
コーヒーでもおごるからさ
ああ、いいよ
これからジム・インストラクターの
バイトだから、明日でもいいかな
ごめんな
と詫びながらも快く引く受ける
オッケー
悪いな、いつも…助かるよ
しかし試験勉強だけでも大変なのに
一生懸命働くよな…双葉
よく学び、よく鍛え、よく働く
文武両道、勤労学生の鑑だな
ほんとうに尊敬するよ
いや、そんなことないよ
でも学費稼がなきゃいけないからさ
母さんにこれ以上負担かけたくないし
そうか…
なんか双葉を見ていると
俺なんか、いつも励まされるし
背筋がピンと伸びる気がするよ
いい友だちを持ったよ(笑)
そういえば来月の格闘技イベントのチケット
手に入れたから、一緒に見に行こうぜ
そんな友人の誘いにニッコリと微笑む双葉
そんなやりとりの傍から教授が声をかける
桐生君、先日提出してもらった小論文
よく書けていたよ
司法試験受験はもちろん応援するが
私としては君に大学院に進学してもらって
研究者としての道も考えてもらいたいのだがね
教授、そんなふうに言っていただけて
とても光栄です
でも今は司法試験に集中させてください
ああ、もちろんだとも
君ならどんな道を選んだとしても
きっとうまくいくし、成功するさ
ところで司法試験に合格したら
裁判官か検事をめざすのかい?
君は正義感が旺盛だから…
実は弁護士になるつもりなんです
母子家庭に育って
同じような境遇にある友だちや
社会的に弱い立場にある人たちが
困っている姿をたくさん見てきました
弁護士になれたら
そんな弱い立場にある人たちの
力になりたいんです
そうか…
私は君のお父さんとは
医者と法律家の違いはあれども
大学の同期でもある
君のことをくれぐれもよろしくと
頼まれてもいるし
お兄さんからも同じように
言われているんだがな…
まぁ君なら自分の道を自分で
切り拓いていくだろう
もし何か困ったことがあれば
何でも相談してくれたまえ
お父さんやお兄さんも
君のことを気にかけていることは
忘れないようにな
退官間際の教授の思いやり溢れる言葉に
ほんのすこし表情を陰らせつつも
教授、ありがとうございます
できるだけ早く弁護士になって
母さんに喜んでもらえるように
頑張るつもりです
今後もご指導をよろしくお願いします
教授は双葉の父や兄のことに触れたことに
多少の後悔を抱きながらも
じゃあしっかり頑張りなさい
と声をかけて廊下を去って行く
はい
ありがとうございます
教授に対して深々とお辞儀をする姿からは
礼儀正しく育てられたことがよくわかる
さあて、バイトに遅れるぞ
双葉はキャンパスを駆け出していく
教授は愛弟子の後ろ姿を見ながら
一人つぶやく
頑張れよ、桐生君
(本ストーリーはアナザーワールドでのカレシたちの紹介のために制作されており、イケカレの本編チャットワールドのカレシとは直接の関係はございません)