Story2:「ある冬枯れの歩道にて…」
夕暮れの駅前大通り。空気はしんと冷め渡り、冬らしい冬。車の往来が増えてきた大通り沿いの歩道はレンガ調で、冬枯れの世界に暖かいアクセントを加えている。
ゆるやかな坂になっている歩道に街灯が灯り始める。
そんな中、歩みを進める身なりの良い青年。それもそのはず、彼はエリート警察官僚、名前は手嶋丈一郎。
大きな事案に一区切りがつき、たまにはいいだろうと今朝は歩いて出勤してみれば、冬の到来を若干甘く見ていた次第である。
好対照な二人が向こうから歩いてくる。
だからさぁ、もっとぐいぐい行かなくちゃダメだよ。
そんなこと言ってもね、真海君…。そんなに簡単に女性を選べないと思うんですよ。
二人には見覚えがあった。片方はよく知る後輩で、かわいくもあるが、何かと競い合うような間柄でもある真海明楽。
あっ!手嶋先輩
にぎやかだと思ったら明楽か、久しぶりじゃないか。こちらは藤崎さんだね。
はい、手嶋さん、お久しぶりです。
手嶋は藤崎総悟のことを明楽ほどよくは知らない。人気恋愛小説家らしく、非常に丁寧な話しぶりで、明楽と並ぶと少しチグハグな印象を受ける。
先輩は仕事帰りですか?お疲れ様です。
ああ、そうなんだよ、今からどこか遊びに行くのかい?
明楽はパイロット。華やかなイメージ通り、合コン好きだったり、サッカーをやっていたりとかなりアクティブである。スマートな外見とも相まってモテるだろうと思う。
明楽が続ける。
今から合コンです。お気に入りの子に出会えるといいなぁ
独り身は頑張れよ、楽しんでこい!
自身も独り身なのだが、そこはそれ、軽口というやつである。自分のことは棚にあげ、後輩にエールを送ってやるのも先輩たるもの…などと思いながら見送ろうとする。
先に彼女作って、先輩に自慢させてもらいますよ
…ん、期待しておくわ(笑)
やり返されるとは思わなかったが、明楽や藤崎に良い出会いがあることは悪いことではない。そのままにこやかに返すと、藤崎が最後にその場をしめた。
手嶋さん、お仕事が大変でしょうが、ご自身も労わってくださいね。
二人は去っていく。
明楽が藤崎の描く小説のファンだということを最近知った。
自分も読んでみようかなと思いつつ、冬の気配が一層濃くなり、街灯と車の光が交錯する道を歩く。
そういえば、自身にも恋人らしい恋人はしばらくいない。警察官僚として社会に尽くすことには何の疑問も感じない。だが、愛する人のために尽くすことには、また違った喜びがあるのにな、とふと寂しく思う。そんな思案をしつつ、大きな建物を通り過ぎると、いわゆる「ビル風」が手嶋を包み込む。
寒くなってきなぁ・・
(本ストーリーはアナザーワールドでのカレシたちの紹介のために制作されており、イケカレの本編チャットワールドのカレシとは直接の関係はございません)